思いを言葉にできないあなたへ

「話すことは得意だけど書くのは下手ね」

小さいころ、母にこう言われてから自分の思いを文章にするのが苦手だった。「僕は書くことが苦手なんだな」。なにげない言葉が胸の奥にまとわりついて残っていた。

原体験から十数年、僕は新卒でWebメディアの記者になった。自分の思いを言葉にする作業から逃げてはいけないと思ったからだ。我ながらあまのじゃくな選択だったけど、仕事にすることで書くことの苦手意識を克服できた。

記者として過ごした期間はわずか1年だったけど、それ以来、さまざまな立場でWebメディアづくりに関わってきた。今日はそんな経験をもとに、当時の自分のように「思いを言葉にしたいけどできない人」に向けて記事を書きたい。

*苦手ではなくルールを知らないだけ

「お前は“てにをは”がまったく出来てないな」と言われて始まった新卒時代。何も分からずもがく中で気づいたのは、文章には基礎的なルールがあることだった。よく考えてみれば何事にもルールはある。それなのに「書くこと」は誰からも教わらずに育ってしまったのだ。

僕の場合はルールを学ぶことで書くことの苦手意識がかなり減った。同じように「文章を書くのがすごく苦手だ」と思い込む人の多くは、基礎的なルールを知らないだけじゃないかと思う。

この記事はハウツー記事ではないけど、一番支えになった本多勝一さんの『日本語の作文技術』を紹介する。この本では文章の書き方に関する具体的なルールを解説している。

例えば「白い紙/横線の引かれた紙/厚手の紙」をひとつの文にまとめる例題がある。単語をそのまま並べると「白い/横線の引かれた/厚手の紙」になるけど、それだと“白い横線”になってしまう。

本の中では「長い修飾語ほど先に、短いほどあとに」のルールを紹介しながら、一番誤解されない並べ替えは「横線の引かれた/厚手の/白い/紙」だと紹介している。このほかにもたくさんのルールが本には書かれており、困ったときは紙にまとめたルールを読み返していた。

このほかにも『20歳の自分に受けさせたい文章講義』や『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニングもおすすめの本だ。書くことに苦手意識がある人は、自分にあった本をお守り代わりにすると良いと思う。

*書くことは知らない自分との対話

文章のルールは支えになるけど、一番重要なのは“自分らしく書くこと”だと思う。はてなで色々なブロガーさんの記事を読んできたけど、魅力的なのは文章のリズムやのせられた想いだった。

それではどうすれば自分らしい文章が書けるのか。それは僕もよくわからないけど、“書くことは知らない自分との対話”ではないかと最近よく思う。人は接する相手ごとに異なる自分を出すけど「書くこと」でしか出会えない自分がいる気がするのだ。

人は驚くほど自分のことがわからない。なんで嬉しいのか、悲しいのか、怒っているのか。そんな単純な感情さえも簡単には言葉にできない。

“独自性は他人との比較から生まれるのではなく、自分の内側の深いところにある”

最近とある講演会で聞いた言葉がずっと頭に残っている。ソーシャルメディアをやっていると、ついつい自分と他人を比較する機会が増える。だけど、“自分らしさ”は自分の内側に眠っているのではないか。

*おわりに

ライトは、「ただ書きたい」あるいは「書かなければならない」という衝動をもつ人が集まるメディアだ。書くことが自分の内側に潜ることだとしたら、それぞれが拾い上げた何かは、ときに恥ずかしく、壊れやすい言葉たちかもしれない。

それでも書きたいと思うのは、自分の思いを言葉にすることが楽しいからだと思う。僕はここまで読んでくれたあなたの文章が読みたい。


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投稿者: Ryoichiro Taketomi

ネットが主戦場のコンテンツ屋です。ビジネスを手段に、“暮らしをより楽しくする時間”を届けています。ニュースサイトの編集&営業、はてなのオウンドメディアプランナーを経て、CHOCOLATE Inc.所属。 TWITTER